第3回:生産計画の粒度を理解する
```前回は、属人化の温床となる「エクセルお化け問題」の背景とリスクを解説しました。
今回は、属人化を防ぐための第一歩として、 生産計画の粒度を整理していきます。 具体的には、大日程計画・中日程計画・小日程計画・人員計画の4つのレベルを確認し、 非量産型製造業での計画立案の視点を明確にしていきます。
この記事のポイント:
生産計画の属人化を防ぐには、まず「どのレベルの計画を立てているのか」を明確にすることが重要です。
大日程・中日程・小日程・人員計画が混在すると、計画基準があいまいになり、
担当者の経験や感覚に依存しやすくなります。
生産計画の粒度とは?4つのレベルを整理する
```生産計画には、目的や計画期間によって複数の粒度があります。 ここでは、代表的な4つのレベルを整理します。
1. 大日程計画(Master Production Schedule:MPS)
大日程計画とは、企業全体の生産計画を大まかな期間で示したものです。 製品の出荷計画や受注計画を基に、月次・週次単位で計画を立てるのが一般的です。
- 目的:長期的な生産量の確保と納期調整
- 計画期間:3ヶ月〜6ヶ月先まで
- 計画単位:製品群単位(例:製品A、製品B)
例えば、以下のような計画が大日程計画に該当します。
- 製品Aは3月に1,000個、4月に1,200個を生産する
- 製品Bは5月に700個の受注が確定しているため、資材手配を優先する
2. 中日程計画(Rough-Cut Capacity Planning:RCCP)
中日程計画は、大日程計画を基にした月次・週次の計画です。 製品ごとの製造リードタイムや機械の稼働率を考慮しながら、 資材手配と生産能力の調整を行います。
- 目的:資材手配と生産能力の調整
- 計画期間:1ヶ月〜3ヶ月先まで
- 計画単位:製品別・工程別(例:製品Aの製造工程1〜5)
例えば、以下のような計画が中日程計画に該当します。
- 製品Aの生産工程1は、5月1日〜5月5日に完了予定
- 製品Bの工程3は、機械トラブルにより1週間の遅延が見込まれる
3. 小日程計画(Detailed Schedule:DS)
小日程計画は、具体的な日次の生産計画を立案するプロセスです。 現場の進捗状況、設備の稼働率、作業員のシフトなどを考慮して調整します。
- 目的:日々の生産計画と進捗管理
- 計画期間:1日〜2週間先まで
- 計画単位:工程別(例:工程1の生産順序)
例えば、以下のような計画が小日程計画に該当します。
- 5月1日、製品Aの工程1を8:00〜12:00で実施する
- 5月2日、工程2で必要な部材が未到着のため、別工程に切り替える
4. 人員計画(Workforce Schedule)
人員計画は、作業者のスキルや力量を基にした計画立案です。 特に非量産型の製造業では、特定スキルを持つ作業者が限られるため、 計画立案時には作業者の力量管理が重要な視点となります。
- 目的:作業負荷の均一化とスキル管理
- 計画期間:日次〜月次単位
- 計画単位:作業者別(例:オペレーターAの稼働計画)
例えば、以下のような計画が人員計画に該当します。
- 作業員Bは、5月1日〜5月3日の期間で工程1を担当する
- 熟練作業員Cが退職予定のため、代替作業者の教育計画を立案する
```生産計画の粒度を整理することで、「今話している計画が長期計画なのか、日々の現場計画なのか」を明確にできます。 これが属人化を防ぐ第一歩になります。
非量産型製造業における計画立案の課題
```タイの製造現場において、特に非量産型の製造業では、 上記の計画粒度が曖昧なまま業務が進んでいるケースが見られます。
課題1:計画の粒度が統一されていない
大日程計画と小日程計画が混在しており、 計画の基準が統一されていない場合、担当者ごとの判断に頼りやすくなります。 その結果、属人化が進みやすくなります。
課題2:人員計画が個人の感覚に依存している
特定の作業員に過度な負荷がかかると、 体調不良や離職のリスクが高まります。 また、作業者のスキルや負荷状況が見える化されていない場合、 適切な人員配置が難しくなります。
課題3:MRPが機能しにくい現場環境
非量産型の製造業では、製品ごとにリードタイムや製造工程が異なるケースが多くあります。 そのため、標準化されたMRPだけでは、実際の現場に合った計画を立てにくい場合があります。
注意したいポイント:
MRPが不要という意味ではありません。
ただし、非量産型製造業では、部材の所要量だけでなく、
作業者のスキルや工程ごとの対応可否も含めて計画する必要があります。
力量管理の視点で計画粒度を見直す
```属人化を防ぐためには、力量管理の視点で計画粒度を見直すことが有効です。 ここでは、3つの見直しポイントを紹介します。
1. スキルセットを可視化する
各作業者のスキルを明確化し、人員計画に反映させます。 例えば、工程1の溶接技術、工程3の品質検査など、 どの作業者がどの工程に対応できるのかを整理します。
2. 作業負荷を均一化する
生産計画の中で、特定作業者の稼働率が高すぎる場合は、 他の作業者に分散する計画を立案します。 これにより、負荷の偏りや離職リスクを抑えることができます。
3. 工程別に計画粒度を調整する
製造工程ごとに必要な計画粒度は異なります。 そのため、小日程計画の詳細度を工程ごとに調整することが重要です。
例えば、非量産型では以下のように工程を細分化して計画することが有効です。
- 工程1:試作
- 工程2:検査
- 工程3:修正
まとめ:計画の粒度を整理することが属人化防止の第一歩
```第3回のまとめポイントは、以下の3つです。
- 大日程・中日程・小日程・人員計画の4つの粒度を整理し、計画基準を統一することが属人化防止の第一歩である
- 非量産型製造業では、MRPだけでなく、スキルや力量に基づく人員計画の立案が有効である
- 力量管理の視点で計画粒度を見直し、作業者の負荷分散やスキル継承を進めることが必要である
生産計画の粒度を整理することで、計画の目的や責任範囲が明確になります。 その結果、担当者の感覚だけに頼らない計画立案がしやすくなります。
次回は、「力量管理を活用した計画立案のヒント」をテーマに、 非量産型製造業での人員計画において力量管理をどのように活用するか、 具体的な事例を交えて解説していきます。
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